世界一の歌姫がショパンに贈った金時計

今日は、イタリアのソプラノ歌手で、当時「世界一の歌姫」と称されていたカタラーニ、アンジェリカ(Catalani,Angelica  1780-1849)を紹介します。

カタラーニは、聖歌隊のバス歌手の娘で、修道院で学びましたが、正規の音楽教育はほとんど受けていません。

17歳の時に、ヴェネチアでデビューした後、ミラノ、リスボン、ロンドンなどで大成功を収め、1814年から4年間、パリのイタリア劇場の監督を務めました。その後10年間、ヨーロッパ各地を演奏旅行したあと引退しました。

音域の広さ、表情豊かな美しい歌唱、さらに美貌も加わって人気を博したといいます。

特にその素晴らしい声量については、ロンドンの音楽愛好家が、彼女の歌を聴きにヨークまで出掛けたいと思うが、と言ったのに対し、「いまいるところで充分聴こえますよ」と答えたという伝説が残っています。

ちなみに、ロンドンからヨークまでは現代の列車でも2時間もかかる距離です。

【ショパンとの関連】

*1820年1月ワルシャワの公会堂で、カタラーニが4回の音楽会を開いた時、当時10歳のショパンの噂を聞きつけ、自分の所へ連れて来させ演奏させました。

その時のショパンの演奏と即興に感動し、金時計を贈りました。この時計の蓋にはフランス語で「マダム・カタラーニ、10歳のフレデリック・ショパンに贈る」と彫り込んであります。

ショパンはこの時計を終生手放さなかったといいます。現在この時計はワルシャワのショパン協会が所蔵しています。

*ショパンもカタラーニのソプラノに感動し、それがのちのピアノ曲の声楽的要素にも生かされることとなったといわれています。

*ショパンが15歳の夏休みに、友人の故郷であるシャファルニアという田舎に滞在しました。その地で歌のうまい女性に「カタラーニ」とあだ名を付け、3銭やってその歌を聴いたという話が、1824年8月29日付の家族宛の手紙の中に出てきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です